妊活中・妊娠中・授乳中のピロリ菌除菌はどうすればいい?


最近、妊活中・妊娠中・授乳中のピロリ菌検査や除菌治療に関する質問をいただくことが増えました。

ピロリ菌がいると胃がんになりやすく、除菌をした方がいい。

自分がピロリ菌を持っていると子供にもうつしてしまうかもしれない。

でも今妊活中・妊娠中・授乳中だし除菌治療ってやってもいいのかな・・・。

そういったお悩みをお持ちの女性はとてもたくさん見えます。

特に次のようなご質問を多くいただきます。


『いつピロリ菌をチェックすればいい?』

『妊娠中や授乳中ピロリ菌除菌は受けてもいい?』

『除菌しなかったらすぐに胃がんにならないか心配。』



今回は日本消化器病専門医の立場から、妊活中・妊娠中・授乳中の女性のピロリ菌対策についてご説明をいたします。

目次

おさえておきたいピロリ菌の基礎知識

まずはおさえておきたいピロリ菌の基礎的なポイントからご説明します。

ピロリ菌を簡単に説明すると『胃に感染して胃がんの発生率を高める胃がん最大の危険因子』です。

ピロリ菌に感染している人は感染していない人に比べて10倍胃がんになりやすいというデータもあるくらいです。

逆にピロリ菌がいなければ胃がんになる可能性はとても低く感染していても除菌治療がうまくいけば胃がんリスクを1/3まで減らすことができます。

ですので将来胃がんになるかならないかは「ピロリ菌がいるかどうか」「ピロリ菌を除菌しているかどうか」がとても重要なポイントです。

そんなピロリ菌ですが感染経路の70%はピロリ菌に感染している母親からの口移しと言われています。

ひと昔前はピロリ菌に汚染された井戸水を生活用水として利用して感染する人がほとんどでした。

しかし今や世界でもトップレベルの浄水技術を備える日本では、井戸水を介して感染する人はかなり少ないと考えられます。

お子さんに感染するタイミングですが、一般的に免疫の不十分な5〜6歳までと言われます。

それ以降は免疫力が発達して大人になるにつれてピロリ菌に感染する確率は低くなります。

ちなみに大人になってからのピロリ菌感染は1%程度なので、一度検査をしてピロリ菌がいなければ基本的には感染を心配する必要はないでしょう。

いつピロリ菌のチェックをすればいいですか?


基本的にピロリ菌のチェックは早いに越したことはありません。

思い立ったが吉日。

妊活中、妊娠中、授乳中に関わらず思い立った時にチェックをしましょう。

妊活中の方であれば、妊娠・出産後のことを考えるとピロリ菌に感染しているかどうか知っておくことはメリットしかありません。さらに妊娠前に除菌治療まで行うことができれば、生まれてくるお子さんへの感染リスクを回避できます。

妊娠中・授乳中の方なら仮にピロリ菌感染に気づくことができれば、お子さんへの口移しや食べ物のシェアなどに十分に注意することができます。

ピロリ菌のチェック方法は血液・尿・便・呼気検査など色々ありますが、ピロリ菌の有無だけ知りたい場合は検診での血液検査を選択することをお勧めします。(※お住まいの市区町村によっては検診でピロリ検査ができない場合もございます。)

なぜなら検診以外の方法でピロリ菌チェックをおこなう場合、事前に胃カメラを受けて慢性胃炎の存在を確認する必要があるからです。

もちろんそれもそれでとってもいいのですが、あくまでピロリ菌の存在を確認するだけなら検診の血液検査で十分です。

名古屋市在住の方なら、名古屋市のピロリ菌検査を利用すれば20歳から39歳の方なら無料で血液検査でピロリ菌チェックができます。40歳から59歳までの方なら胃がんリスク検診を使用してワンコイン(500円)でピロリ菌とペプシノゲン検査(慢性胃炎があるかどうかをチェック)を受けることができます。

ピロリ菌の除菌は妊活中・妊娠中・授乳中でもできますか?

ピロリ菌がいたら一刻も早く除菌してできれば我が子に感染させたくないと思うのが母心。

ただピロリ菌除菌はメリットがデメリットを上回る時にのみお勧めしております。

ピロリ菌の除菌治療は2種類の抗生剤と1種類の胃薬を1週間内服します。

抗生物質や胃薬は胎児や母乳へ移行する可能性が添付文書にも付記されています。

このあたりが治療を行うかどうかのポイントになるため、妊活中と妊娠・授乳中のケースで対応が変わります。

妊活中のピロリ菌除菌について


妊活中のピロリ菌除菌に関しては、妊娠している可能性が少しでもあるなら治療を延期するようご説明しております。

特に妊娠している可能性が否定できず万が一妊娠していた場合、妊娠初期の胎児への薬の移行が懸念されます。

妊娠初期は胎児の器管形成に大きく関わります。

確実に妊娠していない期間内で除菌治療をおこなうことをおすすめします。

また不妊治療を受けている場合は主治医の先生のご意見を第一優先とします。

不妊治療にもさまざまあり、そのほとんどは一般内科医の経験することのない治療領域です。それゆえその道のプロの意見を尊重するのが母子ともに一番幸せな選択肢であると考えられます。

妊娠中・授乳中のピロリ菌除菌について


原則として除菌治療はお勧めしておらず、授乳完了後のピロリ菌除菌をお勧めしております。

ピロリ菌を除菌できれば将来的な胃がんリスクが減り、子供にピロリ菌をうつすこともありません。

しかしその一方で薬が胎児に移行して発達・生育に影響を及ぼしたり、薬の副作用で母親が体調不良を起こせば胎児や育児に影響が出る可能性があります。

実際にボノサップというピロリ菌除菌の薬の説明書には、薬を構成する抗生物質や胃薬には胎盤やお乳を介して胎児に影響を及ぼす可能性が示唆されています。
参考:ボノサップの医薬品情報


母体と胎児の命を優先した場合、妊娠中・授乳中に除菌しなくてはいけないケースはほとんどありません。

除菌は授乳が終わったタイミングでも全然遅くありません。

ピロリ菌を放置したらすぐに胃がんにならない?

「妊娠・授乳中のピロリ菌除菌を延期したら胃がんにならないか心配です。」

というご意見をいただくことがあります。

これはとても心配なポイントですよね。

ただそこまで過剰に心配する必要はございません。

前述した通りピロリ菌は子供の頃に感染が完了しています。

その存在に気づいたのが「今」であって、実は昔からずっとあなたの胃のなかに住んでいたのです。


がん情報サービス胃がんHPより抜粋


グラフから胃がんの罹患率は50代から80代にかけて上昇しているのが分かります。

妊娠を考える世代では胃がんの罹患率は低く、妊娠や授乳で1-2年除菌を遅らせたところで胃がんの発症を過度に気にする必要はないものと考えられます。

もちろん医学に絶対はないので、がんを疑うような症状があれば胃カメラを含めた精査を状況に応じて優先します。

まとめ

妊活中・妊娠中・授乳中のピロリ菌対策のまとめです。

まずピロリ菌チェックは思い立ったらすぐに受けましょう。

名古屋市のピロリ菌検査を使えば、妊活中・妊娠中・授乳中にかかわらずピロリ菌チェックを受けることができます。

またピロリ菌除菌薬には胎児やお乳に移行する可能性のある薬剤が含まれています。

除菌治療を1−2年遅らせたところで胃がんになる心配はほとんどないので、授乳が終わったタイミングで治療を受けましょう。



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