機能性ディスペプシアを徹底解説【症状、原因、診断、治療、気を付けること】
「胃が痛くて胃カメラを受けたけど、特に問題ないと言われた。」
「食後の胃もたれや腹満感で胃薬を処方されて飲んだけど治らない。先生には様子見ましょうとしか言われない。」
こういった悩みを抱えた方がしばしば当院を受診されます。
でもこれってもしかしたら機能性ディスペプシアという病気かもしれません。
機能性ディスペプシアは、胃の不快な症状で胃カメラなどの検査を受けても、原因となるような器質的な病気が見つからない場合に疑われます。
あまり聞きなれない病気かもしれませんが、上腹部痛で受診される患者さんの45-53%の方が機能性ディスペプシアであるという報告もあるくらい悩んでいる方も実はたくさんみえます。
一般的に、胃や十二指腸などの消化に関わる臓器のはたらきは自律神経の調子と密接に関わっています。
日常生活でのストレスや睡眠不足、食生活の乱れや運動不足といったライフスタイルが自律神経を乱して胃の不調につながります。
病院では「気持ちの問題」と言われたり、「ストレスを無くしましょう」的なぼんやりとしたアドバイスをされることが多く悩み続ける方も少なくありません。
どうして痛みがでてしまうのか、どういった治療があるのかを知って理解を深めることが症状の改善につながるケースも多いと認識しております。
はじめて病気を知った方、病気で悩んでいる方はぜひご一読ください。
目次
機能性ディスペプシアの自覚症状として次のような症状が挙げられます。
・食後のお腹の張る感じ
・食べたらすぐにおなかがいっぱいになって食べれない
・胃の痛み
・胃のむかつき
・みぞおちの焼ける感じ
症状の感じ方は患者さんによってかなり違い多岐にわたります。
機能性ディスペプシアの方は主に3つのメカニズムで胃の不快症状が出現します。それぞれを食事を消化する過程で説明をいたします。
ごはんが食道を通って胃の中に入ると胃壁にごはんが到着します。
ごはんが胃壁に到着すると、胃壁が引きのばされます。
機能性ディスペプシアの方はこの刺激に過敏なことがあり、すぐにおなかが張ってしまったり胃痛が出現する原因となります。
胃の中にごはんが入ると、次のごはんを待ち構えるために胃壁が緩んで広がります。(胃の弛緩性運動)
さらに胃から十二指腸へごはんを送り出すために胃が動きます。(胃の排出運動)
そして十二指腸にごはんが到着すると、十二指腸もうねうね動いて小腸へごはんを送ります。(十二指腸の運動)
この一連の胃・十二指腸の運動がうまくいかないことを胃・十二指腸の運動障害と呼びます。
次のごはんを待ち構えるための胃の弛緩性運動がうまくいかなかったり、胃に溜まったごはんがうまく十二指腸へ送られなかったり過剰に収縮してしまったりすると胃痛や腹満感となります。
ごはんを消化するために胃壁から胃酸が分泌されます。
機能性ディスペプシアの方では、分泌された胃酸に対して胃壁が知覚過敏であったり、胃酸が十二指腸に胃酸が流入したときに十二指腸の壁も知覚過敏であることが報告されています。
こういったメカニズムで胃の不快な症状が出現します。
機能性ディスペプシアは様々な要因が複雑に絡み合って生じます。
特に心理的ストレスや不安が原因となっているケースは多く、抑うつや不安障害を持つ方では機能性ディスペプシアの症状が出やすく、症状も治りにくい傾向にあります。
それ以外にも運動、不眠、高脂肪食、食習慣の乱れなども機能性ディスペプシアの原因として挙げられます。
特に食事に関しては脂肪摂取が多ければ多いほど腹満感を強く感じやすい傾向にあり、実際に高脂肪食の負荷によって健常者に比べて吐き気や腹痛が起こりやすいというデータもあります。
また感染性胃腸炎にかかった後に機能性ディスペプシアになってしまうケースもあります。
特に感染後の機能性ディスペプシアは早期飽満感や体重減少・悪心などの症状が出やすいことが多いとされます。
ピロリ菌に関連した機能性ディスペプシアも存在します。
機能性ディスペプシアの方でピロリ菌を除菌すると胃の不快症状が改善する方が14人に1人程度見えます。1/14と決して確率は高くはないですが、除菌治療がお済みでない方は除菌治療を試す価値は十分にあります。
機能性ディスペプシアの診断は症状の原因となる病気の除外診断です。
当院では主に3つの検査で原因を探ります。
血液検査でチェックすることは肝機能障害や炎症反応、貧血がないかなどです。
機能性ディスペプシアでは基本的に肝機能障害や炎症、貧血は認めません。
胃カメラを受けると胃の表面を直接目で確認することができます。
機能性ディスペプシア特有の内視鏡所見はありませんが、
症状の原因となるような逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がん、アニサキスなどの病気を見つけることができます。
腹部超音波検査は主に胃の外の臓器を確認する目的でおこないます。
胃の症状だと思っていても、実は胆石症や膵がんであったりする可能性もあるので、胃カメラだけでなく腹部超音波検査を受けることをお勧めいたします。
特に痛みなく横になるだけでできる検査ですので気軽に受けていただけます。
機能性ディスペプシアの治療が難しいのは「この薬を飲めば症状が良くなる」といった決まった治療法がない点です。
治療薬の種類は多彩で次のようなものが挙げられます。
①酸分泌抑制薬
②消化管運動機能改善薬
③漢方薬
④抗うつ薬、抗不安薬
⑤消化管粘膜保護薬
薬の効果は患者さんによっても違いますし、薬の合う合わないは使用して見ないとわからないことも多く経験します。
また薬を飲んでいても生活が不規則で睡眠が取れていなかったり、ストレスが解消できていなかったりするとなかなか症状が改善しないこともあります。
診療の中で自分に合った薬を探しつつ、生活習慣を整えることが機能性ディスペプシアの治療では重要です。
機能性ディスペプシアの方の胃・十二指腸は胃酸に対して過敏となっていて、お腹の張りなどを自覚しやすいことがあります。
酸分泌抑制薬は胃酸の分泌を抑えて症状の改善を期待することができます。
酸分泌抑制薬はPPI(プロトンポンプ阻害薬)、H2RA(H2受容体拮抗薬)、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)の3つに分類されます。
PPIの代表的な薬としてはパリエット、ネキシウム、タケプロンといった薬が挙げられます。
胃潰瘍や逆流性食道炎にも使用されることが多く、1日1回内服します。
H2RAの代表薬としてガスター、プロテカジンといった薬が挙げられます。
1日1〜2回内服するタイプのお薬です。
PCABの代表薬はタケキャブです。
タケキャブは市販されている酸分泌抑制薬の中では最も酸分泌抑制効果の高い薬と言われています。
消化管運動機能改善薬は機能性ディスペプシアを代表とする機能性消化管疾患(検査では異常はないのに胃腸症状がある)の治療薬として開発された薬剤です。
特に機能性ディスペプシアで処方されることの多いのがアセチルコリンエステラーぜ(AChE)阻害薬です。
こちらはアコファイドという薬が代表的です。
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は胃の収縮運動に必要な神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する作用があります。このAChEを阻止することでアセチルコリンが分解しないようにして、胃の収縮や運動を増強させるのがアコファイドです。
AChE阻害薬は機能性ディスペプシアの治療ガイドラインでも推奨度Aとされています。
1日3回毎食前に内服するタイプの薬剤です。
その他にもドパミン受容体拮抗薬(薬剤名:メトクロプラミド、ドンペリドン、スルピリド等)、セロトニン5-HT4受容体作動薬(薬剤名:モサプリド等)といった薬剤を用いることもございます。
実は漢方薬が機能性ディスペプシアの治療では頻繁に使用されます。
特に六君子湯はガイドラインでも推奨度Aと評価されている有効な薬です。
ある研究では六君子湯を内服するとグレリンと呼ばれる食欲ホルモンの分泌が促進され、胃腸の動きが良くなるという結果が報告されています。
副作用もあまりなく、漢方に抵抗のない方であれば一度検討してみてはいかがでしょうか。
六君子湯以外の漢方も選択肢としてさまざまございます。
外来診療では、患者さんの症状や薬の効果に合わせた漢方薬を選択します。
機能性ディスペプシアでお悩みの方の中には、抑うつ状態であったり、漠然とした不安を抱えている方が数多く見えます。
心理的なストレスが症状の原因となっているケースも少なくなく、そういったストレスを軽減して症状を和らげる目的で抗うつ薬や抗不安薬が効果的な場合があります。
胃薬の中にもいくつか種類がありますが、消化管粘膜保護薬(スクラルファート、レバミピド等)もその1つです。
機能性ディスペプシアにおける消化管粘膜保護薬はガイドラインでは推奨度B(有用かどうか明らかではない)と示されています。
アコファイドや六君子湯(推奨度:A)に比べると使用頻度はやや減りますが、実臨床では消化管粘膜保護薬を飲んでいて胃の症状が和らぐ患者さんも見えるため、必要に応じて薬を検討いたします。
機能性ディスペプシアの診断、治療、メカニズムについて説明をさせていただきました。
症状の原因は1つとは限りませんし、仕事のストレスなどの切っても切れないような状況を抱える患者さんも少なくありません。
できることを1つずつ焦らず解消していくことで、波はあるものの必ず症状は改善します。
休診日木曜午後/土曜午後/日・祝祭日 最終受付は診療終了の15分前となります。
胃→胃カメラ 大腸→大腸カメラ
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