痔のある人は便潜血陽性なら大腸カメラを受けなくちゃいけないの?



「便潜血検査で陽性になったのですが、もともと痔があるから大腸カメラは受けなくてもいいですよね?」



という質問をよく受けます。

たしかにイメージ的に痔のある人は便に血が混じりそうですし、
実際に大腸カメラをおこなうと便潜血陽性の原因が痔であることも多々あります。


患者さんの気持ちとしてはできれば大腸カメラは避けたいところですし、
「カメラは受けなくても良いですよ」とニッコリ言ってもらいたいところですよね。


ただ痔があるからといって、便潜血陽性で大腸カメラを受けなくても良いとは言いきれないんです。


今回は痔のある人が便潜血陽性でも大腸カメラを受けるべき理由を説明いたします。

目次

痔があっても便潜血陽性なら大腸カメラを検討しましょう。

当たり前ですが、便潜血検査は採取した便に血液が混じっていれば陽性になります。

その原因が痔なのか、ポリープなのか、大腸がんなのかは大腸カメラを受けてみないとわからないということです。

もちろんそれをわかった上で患者さんは質問されていると思うので、論文ベースでその理由をお話したいと思います。

理由① 痔があっても便潜血陽性になりやすいわけではない


日高氏ら(1)の報告は68256名を対象に行った研究で、問診で痔が悪いという人と痔は悪くないという人を比較したものです。

痔の悪い人の便潜血陽性率は4.7%で、
痔の悪くないという人の便潜血陽性率は4.4%でした。

その差わずか0.3%で、痔があっても無くても便潜血陽性率に変わりないという結果でした。

また岩瀬氏ら(2)の報告は、痔症状で肛門外来に受診した232名を対象に行った研究です。

肛門外来に受診した患者さんの便潜血陽性率は8.2%で、
同施設でおこなった人間ドックの便潜血陽性率は9.3%でした。

これらの報告から
痔があっても便潜血陽性になりやすいとは言いきれないことです。

理由② 精密検査の結果は痔の有無に関係ない


大江氏らの報告(3)は、110813名を対象にした痔の自覚のある人と自覚のない人の検査受診率と有所見率(何か所見があった率)を比較した研究です。

痔のある人の検査受診率は39.2%で、
痔のない人の検査受診率は46.5%という結果でした。

やはり痔の自覚のある人は精密検査を受けない傾向にありました。


ただ実際に大腸カメラなどの精密検査を受けた結果としては、痔の有無に関わらず約40%で大腸ポリープ、約2%で大腸癌が見つかりました。


ですので痔があるから便潜血陽性になりやすいとは言い切れないし、
大腸カメラなどの精密検査を受けた結果は痔の有無に関わらず大腸ポリープや大腸がんが見つかるということです。

痔持ちの人は毎年大腸カメラを受けないといけないの?


痔の有無は便潜血陽性に関係ないという報告をご紹介しましたが、実際には痔があって毎年便潜血陽性になってしまう方が一定数見えます。

ではそういった方は毎年大腸カメラを受けなきゃいけないのかと言うと、そうではありません。


これはほとんどの大腸がんは大腸ポリープが時間をかけて年単位で成長することがわかっているからです。


例えば前年度にすでに大腸カメラを受けて特に問題がなかった場合、

少なくとも3年以内に大腸がんになるようなポリープはなかったということなので、仮に今年度便潜血陽性になったとしても必ずしも大腸カメラを受ける必要はないと考えられます。

ただ検査を受けるべきかどうかの判断は先生によって考え方が違います。

というのも運悪く顔つきの悪い大腸がんが1年のうちにできてしまう可能性もゼロではないので、

便潜血陽性になった以上は大腸カメラを受けない限り本当に大丈夫かわからないという考え方もあるからです。

もし検査を受けるべきか迷われる場合は、最後に大腸カメラを受けた医療機関に一度聞いてみることをおすすめいたします。

前回の大腸カメラの結果によっては、前年度に大腸カメラを受けていても検査しておいた方が良いこともございます。

思いは1つ。最悪のシナリオを防ぎたい。


『痔があっても無くても便潜血陽性なら一度は大腸カメラを受けていただきたい。』


これが私が最も伝えたいメッセージです。

痔だと思って便潜血陽性を放置していたら、最終的に大腸がんだったというのが最悪のシナリオです。


例えば便潜血陽性になってそのまま放置したとします。


その後1年経っても特に自覚症状がないので「あぁやっぱり問題なかったんだ」と考えます。


さらに翌年便潜血陽性になったとします。


特に自覚症状がないとまた検査を見送ってしまうかもしれません。


そうやって検査を受ける時期が遅くなっていってしまいます。

ほとんどの場合、大腸がんは大腸ポリープが年単位で少しづつ大きくなって最終的にがんになります。


大腸ポリープの段階では自覚症状はありません。


だから便潜血陽性でも自覚症状がないのです。


そして自覚症状のない時点でポリープを切除しておけば、大腸がんになる可能性をぐんと下げることがわかっています。


巷(ちまた)で言う便秘や腹満感などの大腸がんの早期症状は、あくまで『進行大腸がん』の早期症状です。


進行がんの時点で、お腹の手術を受けなくてはならなかったり、場合によっては抗がん剤治療が必要になるかもしれません。


そういった方を少しでも減らすことができるのが大腸カメラです。

まとめ

痔があっても便潜血陽性なら原則大腸カメラを受けてください。

なぜなら痔があるから便潜血陽性になりやすいわけではないからです。

そして特に直近3年以内に大腸カメラを受けていない人は検査を受けることをお勧めいたします。

検査をした方がいいか迷う場合は、最後に検査を受けた医療機関にご相談ください。

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